実は昨日、映画2本観てきました。2本目に観たのがこの『わが母の記』です。
昭和の文豪である井上靖氏が68歳の時に出版した自伝的小説が原作で、小説は老いた母の80歳から亡くなる89歳について書かれた「花の下」「月の光」「雪の面」の3部作となっています。
どんなに記憶が消えていっても、決して忘れられないこと・・・。
老いて記憶が無くなっても、幼少時に別れた息子が書いた詩を大事に持ち、その詩を口ずさみ、「どうしたら生きているうちに息子に会えるのか」と悲壮な表情で母は息子に訴えかけます。
幼い頃、息子だけを残した母の思い、ずっと捨てられたと思って生きてきた息子の思い、大きな溝がこのシーン以降、埋まっていくように感じました。
そして、沼津の海で母をおぶって歩く息子の表情はとても穏やかでした。
親の深い愛情が、息子に対する母の強い思いが認知症を患い消えかけた記憶の中でも、忘れることはできなかったのでしょう。
親子の関係にはいろいろな形があるとは思います、でも、親の強い愛情をこの作品では見せつけられたように思いました。
〈作品情報〉
ストーリー
昭和39年。小説家の伊上洪作(役所広司)は長男であったが、幼少期に母・八重(樹木希林)に育てられていなかったことから、八重とは距離をとって生活していた。しかし、父が亡くなって状況が変わり、八重の“暮らし”が家族の問題となる。洪作は妻と3人の娘、妹たち“家族”の支えにより、自身の幼い頃の記憶と、八重の想いに向き合っていく…。八重は薄れゆく記憶の中、“息子への愛”を必死に確かめる。また、洪作もそんな母を理解しようとするが――。
監督:原田眞人
原作:井上靖『わが母の記 花の下・月の光・雪の面』(講談社刊)
キャスト:役所広司、樹木希林、宮崎あおい、三國連太郎、南 果歩、キムラ緑子、ミムラ、菊池亜希子、三浦貴大、真野恵里菜
公開日:2012年4月28日
上映時間:118分
役所広司さん、樹木希林さんの演技はさすがでした。そして脇を固める俳優陣も素晴らしかったです。後半、いろいろなことに思いを馳せ泣き虫な私には涙が止まりませんでした。とても見応えのある作品であるとともに、とても考えさせられる作品でした。