舞台『春琴』

これで最後のワールドツアーになりそうな舞台『春琴』。もう二度と観れないと思っていたので、ものすごく楽しみにしていました。


今回の東京公演は2回観劇予定で昨日は1回目。席はなんと、なんと、最前列です!ただちょっとセンターではないし、最前列とあって見にくさはありましたが、役者さんの表情、息づかいまで、はっきり感じとることができました。


舞台は・・・やっぱり素晴らしいの一言。もう、再々々演とあって、話の内容も流れもわかっていながら、役者さんたちが作り出す空気感に圧倒されるばかり。


演出はサイモン・マクバーニー氏。


まだ電灯がなかった時代、西洋では可能な限り部屋を明るくし、陰翳を消す事に執着しましたが、日本ではむしろ陰翳を認め、それを利用する事で陰翳の中でこそ生える芸術を作り上げ、それこそが日本古来の芸術の特徴だと主張した谷崎潤一郎氏の随筆『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』。


日本人ではないサイモン氏が、日本古来の美・陰影を、春琴抄という作品において見事に表現し、西洋の美(現代の日本と言ってもいいのかも)の象徴である光と対峙させる見せ方は、やはりゾクゾクさせられました。


そして、役者さんたちの演技は完成度が高く、動きの一つ一つが、息づかいが、足音でさえも、演出されたもののように、見ている私自身も息を呑むことも、まばたきすることさえも許されないのではないかという、緊迫感の中に身を置いて見ていたように思います。


舞台終了後のカーテンコール。たくさんのたくさんの拍手に迎えられ、何度も舞台に役者さんたちは戻ってきてくれました。回数を重ねるごとに、役者さんたちの表情が緊張から解き放たれたかのように、穏やかに変わっていったのがとても印象に残っています。


芸術性の高い、素晴らしい作品を観客という立場で、同じ空間に身を置けただけでも、最高です。

2回目は千秋楽の昼公演予定。今度は舞台全体が見渡せる席なので、楽しみです。


《公演情報》

●公演日程:2013年
 8月1日(木)〜10日(土)
●演出:サイモン・マクバーニー
●出演:深津絵里
    成河
    笈田ヨシ
    立石涼子
    内田淳子
    麻生花帆
    望月康代
    瑞木健太郎
    高田恵篤
    本條秀太(三味線)

●会場:世田谷パブリックシアター


観劇日時:2013年8月3日(土)18時30分開場、19時開演