舞台『ベッジ パードン』

世田谷パブリックシアターにて、シスカンパニー公演の舞台「べッジ パードン」を観てきた。



三谷幸喜氏作・演出の作品は初めての観劇。チケットを取るのが大変だっただけに、当日も立ち見の人が結構いた。

〈簡単な作品紹介〉本作で三谷氏が描くのは、文豪としての評価を受ける前の夏目漱石の姿。明治33年、彼が33歳の時、イギリス・ロンドンに留学した際の物語。家族を日本に残し、大きなカルチャーギャップの中で過ごしたイギリスでの生活は、漱石には過酷であったとされているが、本作では、当時の漱石の日記や手紙に着目。そこには、下宿の使用人である「ベッジ・パードン」なる女性の名前がたびたび登場する。これは、本名ではなく、漱石が付けた呼び名。彼女が相手の言葉を聞き返す「I beg your pardon?(アイ・ベッグ・ユア・パードン?)=失礼ですが?」が、彼女のキツイ訛りと舌足らずな発音のせいで、「ベッジ・パードン」と聞こえたからなど、彼女とのやりとりには、漱石らしい軽妙でほほ笑ましい描写も見受けられるという。


生来の神経症的性質を抱え、漱石は異国の地でどんな人間模様を育んでいたのだろう?三谷幸喜が描く“のちの文豪”と“ベッジ・パードン”の物語。


夏目金之助漱石の本名)役は、野村萬斎さん。雰囲気がぴったり、現代劇なのに現代人ぽくなく漱石の神経質な感じを上手く表現していた。

ベッジ・パードン(本名はアニー)役は、深津絵里さん。高音の声の出し方(春琴を思い出した)、間の取り方、ひとつひとつの仕草、メインでない時の細かい演技、すべて抜群だった。



大泉洋さんは、金之助の下宿の下に住む日本人役。テレビで見ていたのと印象は変わらないが、さらに演技に切れがあった。この人、出てくるだけでなんか面白いことしてくれそう。世話好きのいい人だったのに、実は・・・。後半はシリアスな演技も見せてくれた。


浦井健治さんは、私はお初の方だが、ベッジの弟役で、とにかく歌が上手かった。まぁ、あんまりいい弟ではないが・・(自分の遊んだ借金のために姉のベッジにいかがわしい店で働くよう頼むなんて)。



さらに、浅野和之さんの11変化は見応えがあった(この舞台の見所のひとつ!)。1人で11人(1人は犬のミスタージャック役)を演じ、同じ場面で何人かに早変わりする場面は会場から笑いが耐えなかった。金之助がイギリス人がみな同じ顔に見えると言っていたイギリス人はみな浅野さんが演じていた。すごく面白かった。


笑いが要所要所にちりばめられ、後半は金之助とベッジの幸せな時間が続くのかと思いきや、切ない別れが待っていた。

休憩15分を含む、3時間5分の長丁場だったが、あっという間の楽しい一時だった。


久々の休みで疲労も溜まっており、今日は観に行くのを止め引きこもろかと少し思っていたが、観に来て本当に良かった。素敵な作品だった。


もう一度、来月の後半に観に行く予定。

今回のストーリーを思い返しながら、今度はさらに細かいところまでじっくり観てきたいと思う。


[作・演出] 三谷幸喜
[出演] 野村萬斎深津絵里/大泉 洋/浦井健治浅野和之
公演期間は、2011年6月6日(月)〜7月31日(日)


次回観劇は千秋楽間近の日程。さらに熟成された演技が見られることを楽しみにしている。